病院経営

法務部門の強化

 病院PFI事業に見られるように、地方自治体には、民間企業と互角に折衝して適切な契約を結ぶだけの交渉力に乏しい場合があります。
 そもそも、医療機関は、医療という産業の特性上、専門性のきわめて高い職種の人で構成されているために、経営上業種を問わずに必要な財務や法務の知識経験に乏しい傾向があります。
 さらに、国公立の医療機関となると、紛争を前提とした厳しい対応を想像することすら、職員には困難な場合があります。(これは国立大学病院にも当てはまる弱点です。)

 私は教員でありながら、病院の経営にかかわる仕事をしている関係上、あまりに問題のある契約に苦労してきたため、病院の法務部門を十分に強化することが、必要だろうと考えています。

 また、医療事故防止のために医療行為の安全性を向上させる目的で、病院に専任医療安全管理者や医療安全管理部が置かれるようになってきています。このような人材や部署は、医療事故を防止するのが仕事であるにもかかわらず、しばしば起きてしまった医療事故の対応をすることを求められ多くの時間をこれらに割いている場合が見受けられます。

 本来、起きてしまった医療事故の対応は、その医療を担当した医療従事者に加えて医療機関としての意思形成をする経営者に法務部門が加わり対応を検討するべきものです。このような医療事故に特化した法務部門が、米国の病院で古くから活動していたRisk Management部門でした。

 米国の病院のRisk Management部門は、古くはJD(法学士あるいは法務博士に相当する)が責任者として配置される例が多く見られています。Dana Fabar Instituteの医療事故を契機に、米国内で医療安全を推進する重要性が認識され、Risk Management部門の機能に医療安全が付加され、そして現在では医療安全部門が明確な役割を与えられるように至ったという歴史的経緯があります。

 わが国でも、医療事故に対する対応に法律家が積極的に参与することは、迅速で適切な対応を進める上で重要だと考えます。

 日本の病院では、このような医療事故に対応するにあたり、法的な判断をする能力に乏しいという弱点を抱えており、これが総合的にマネジメント力の不足を導いていると感じています。

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生駒市で 市立病院設置条例が可決されたそうです。

生駒市で市立病院を設置するために必要な市立病院設置条例が可決されたとのことです。この病院を巡っては、奈良県の医療審議会で病床配分が認められなかったり、生駒市の市議会で市立病院設置条例が継続審議とされてくるなど、様々な経緯を抱えて今回の条例可決に至っています。

市立病院が、実質的に市の医療ニードに応える医療サービスを提供できるように、早期に開院できることを祈っています。


生駒の新市立病院:曲折含みで容認 医師会、諮問機関に--設置条例修正可決 /奈良

 生駒市の新病院設立問題で、同市議会は23日、市が提出した市立病院設置条例案を一部修正し、賛成多数で可決した。病院設置にゴーサインが出たことになり、山下真市長は「設立に向け大きな前進」と語った。しかし、計画に反対している医師会代表らを入れた諮問機関「病院事業推進委員会」の設置が盛り込まれており、今後も曲折が予想される。

毎日新聞奈良版 2009/06/24

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RCAは、経営の問題分析にも活用できる。

医療従事者には医療事故防止(医療安全)の専用ツールと思われているRCAですが、元々は工場での品質向上のために開発された手法(特性要因図)ですから、当然医療事故防止以外の場面でも利用することが出来ます。

たとえば、次の図は、病院の内部が狭く外来が混雑するという課題を分析した例です。この図ように、様々な要因の因果関係をより見やすく表現できるため、様々な人が知恵を出しやすくなることで改善が進むというのが、特性要因図(RCA)を利用した分析と問題解決のプロセスです。

RCAを医療安全専用にツールだと思い込まないず様々な課題に応用することで、RCAは医療機関の経営改善に役立つものと思います。

20090223

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患者が自分のカルテを作る

医師は、学会などに参加して医学知識を学ぶだけではなく、生涯にわたって医療に係わる様々なことを自主的に勉強しています。

ある診療科から、情報技術の医療への応用について最近話題を紹介する講演を依頼され先日お話をしてきました。

Dscf1400s情報技術は、病院や診療所での料金計算から導入が始まりましたが、徐々に処方や指示の伝達と検査結果の検索、そして病院や診療所でのカルテとしての利用(電子カルテ)へと応用範囲が広まってきました。

最近では、患者さんが自分自身の受けた医療行為や検査結果をまとめて、自分自身のカルテをコンピュータ上に作るようになってきました。このような動きをPersonal Health Recordと呼びます。このPHRとして注目されているGoogle Healthについて、紹介し、その仕組みや、利用する医療機関の意図などをお話してきました。

Google Healthでは、自分が飲んでいる薬の処方を登録したり、検査結果を登録したり、病名を登録することが出来ます。このように、様々な情報を登録することで、医療機関を移動したり、複数の医療機関を利用しても、自分のカルテを持ち歩いているのと同じ状況を電子的に作り出すことができます。こうすることで、無駄な検査を予防することや、検査結果の見落としを防ぐことができます。さらに、別な医師から処方された別の薬が副作用を起こす組み合わせだった場合に、Google Healthは警告を表示するなどの機能も持っています。

将来は、このようなサービスを通じて患者さんが自分自身の医療行為をしっかり把握して、その医療行為を評価することが容易になっていくのでしょう。このような変化を意識して、医療従事者は研鑽していかなければならないことをご紹介しました。

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奈良県の医療審で生駒市の市立病院の開設が審議がされます。

2月20日に、奈良県の医療審議会が開かれ、生駒市より提出されている市立病院の開設が審議がされます。果たして、どのような結論が出るのか注目しています。

生駒市の市立病院は、生駒市の中心部にあった生駒総合病院が廃院となったため、この病院の代わりになる病院が必要であるとの地元住民や地元医師会の要望により設置することになったのです。この市立病院を設置するにあたり、直営ではなく、指定管理者方式あるいは誘致方式で設置しようとしたのですが、地元の医療機関これに応じるところが無く、公募にしたところ徳洲会が応募して来て、誘致方式で病院を開設することとなりました。

ところが、徳洲会が病院を運営することについて、地元の医師会から地元の医療機関が運営に当たるべきである、現在は産科医療と小児の2次救急以外は医療供給は充足しているという意見がだされており、医療審議会での開設に関する審議が注目されています。

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近江八幡PFI解約調印 終りではなく、はじまり

 本日付の京都新聞Online版によると、近江八幡市立総合医療センターのPFI契約が、本日合意解除されたとのことです。

 PFIによる資金調達・運営方法を含めた、病院の経営に関する知識と経験の不足から起きた近江八幡市民総合医療センターの経営難は、その足かせの一つを取り除くことができたことになります。

 PFI契約が解除されたことは経営難が終ったのではありません。経営難からの改善の入り口に立つことが出来たに過ぎないのです。

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008122500072&genre=C4&area=S00

PFI解約合意書に調印
近江八幡市と運営側 病院、4月から直営に

Kyoto Shimbun 2008年12月25日(木)

 PFI(民間資金活用による社会資本整備)方式で運営している近江八幡市立総合医療センターをめぐり、同市と同センターを運営する特別目的会社(SPC)「PFI近江八幡」は25日、PFI解約合意書に調印した。

 合意書によると、解約日は2009年3月末。市は同センター整備費の残額約118億9100万円をSPCに支払って施設を一括で買い取り、4月から直営化する。解約に伴い、市はSPCに逸失利益補償などの解決金20億円と、撤退する受託業者への補償約2900万円を支払う。

 調印式は同市役所で行い、冨士谷英正市長と槙系院長、井谷守SPC社長らが出席した。
 調印後の会見で、冨士谷市長は「ひとつの山を越えられた。かけがえない同センターを残すため、経営改善へ今まで以上に努力する」、井谷社長は「30年間続けるつもりだったので残念だが、市の事情からやむを得ないと考えた。PFIがおかしかったとは思わない」と述べた。

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経営計画の失敗を回復することは困難

 近江八幡市立総合医療センターのPFI事業が解除されたのは、計画段階での失敗が原因でした。近江八幡市がこのような誤りを早期に修正しようとPFI事業を解消するのは当然のことです。

 ただ、PFI事業を解消したといっても、計画の失敗を回復することは困難でしょう。なぜなら、確かに金利部分はあるていど公債に借り替えることで軽減されますが、それでもなお現実に建築に要した費用と運営に要する費用は軽減されることはないからです。病院の収益は、健康保険制度により実質的に決められてしまっています。建築費や設備費・管理費が高コストであれば、結局医療行為に使われる消耗品や人件費を抑制するという方向に進むことになるのです。つまり、病院を建築したことで、近江八幡市の市民は将来にわたり大きな負担を負い、そこで働く人の生活を貧しくし、医療の質に制約を受けることになったのです。

 近江八幡市立総合医療センター事業では市と市民は大きな負担をした。では、その負担により利益を得たのは誰なのだろうか。わが国での病院PFI事業を見るとき、利益が現実にだれに発生しているのかを見極める必要があるのではないでしょうか。

PFI解除 甘い見通し 経営悪化
近江八幡市立医療センター 収益最高で計画の84%

 近江八幡市が17日発表した市立総合医療センターのPFI契約解除。その背景には、過大な収益を織り込んだ経営計画の甘さがあった。

 冨士谷英正市長は記者会見で「旧市民病院時代ですら、年間の病床稼働率が最高84%だったのに対し、センターの当初計画では95%を見込むなど、過大な収益計画だった」と述べ、前市長時代の当初計画の問題を指摘し、契約解除に至った最大の原因だとした。

 センター幹部は「開院翌年の2007年度の医業収益84億円は、旧市民病院時代も含めて最高。現場の医師や看護師は最大限の努力をしている」と主張する。しかし、計画の年間100億円には遠く及ばないのが実情だった。

 PFI方式は、公共施設の建設や運営に民間資本を活用するため、起債で資金を調達する場合に比べ、利子が高くなる。それでも市は、民間に運営を委ねれば大幅な費用削減ができると判断し、導入を決めた。

 だが開院後は、収益が想定を下回り、利子などが経営を苦しめた。そこで市は今年7月から、契約解除に向けた交渉を、センターを運営する特別目的会社(SPC)との間で進めた。

 市は「病院債を発行して直営化すれば、最初の5年間は元本据え置き。その間にセンターの収支を改善できることが、契約解除の一番の効果」と説明する。

 一方、会見に同席したセンターの槙系院長は「資金的な余裕があれば、PFIの精神を追求できたかも知れないが、私たちにその時間はなかった」と述べ、経営難の原因とPFI方式自体の問題とを「切り離して考えるべき」とした。

 市は、直営化から6年後に経営は黒字になるとの見通しを示しているが、黒字だった旧市民病院時代のノウハウがセンターでも通用するという保証はなく、これから長く、険しい道のりが続く。
(2008年12月18日  読売新聞)

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病院にPFI事業は不適切なのか(病院管理学会での講演に注目)

11月15日に静岡で、日本医療病院管理学会の第46回年次総会が開かれる。この会のシンポジウムの一つに「病院管理とNPM」があり、病院PFIが話題として取り上げられる予定になっている。果たして、どのような論が展開されるのか興味深く見守ってみたい。

(12月18日追記)

このシンポジウムでは、法的技術としての妥当性と、費用抑制の可能性について改めて述べられただけだった。現実に病院PFIがどのような課題を抱えているのかを、掘り下げた議論を今後期待したい。

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病院にPFI事業は不適切なのか(英国の病院PFI アップデート)

2008年10月23日付けで、イギリスのBBCが英国での病院PFIについて報道をしている。この中で、病院事業の資本更新にPFIを用いる際の最大の課題として、病院の収益が長期にわたって安定ではないことが指摘されている。この課題は、近江八幡市の委員会でPFI事業スキームの本質的な問題点として指摘した点である。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/7684321.stm

英国での病院PFI事業は、病院の財務内容に対して悪影響を及ぼしていると考えられており、この結果、来年(2009年)4月からNHSにおけるPFI債務を財務諸表上にも示すよう英国政府は方針を転換している。この結果、PFIによる資本更新を行った病院は、新たな資金調達が困難となるという懸念に直面している。地方自治体や国立大学法人での資本更新手法としてPFIが広く用いられることにより、(時にはoff balanceの)長期債務を抱えた企業体が増加することになるのだということを意識し、これが長期的な資金調達にどのような影響を及ぼすかは理解しなければならない。

http://www.thecnj.co.uk/islington/2008/103108/inews103108_12.html

これら英国における病院PFIの問題をふまえて、近江八幡市民医療センターおよび高知医療センターでPFI事業にともない生じた収入欠損(赤字)を考えると、根本的な原因のいくつかが共通することがわかる。次回(中)からは、その根本的原因について、記すことにする。

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病院にPFI事業は不適切なのか(上)

公共事業への国や地方自治体などの支出を抑えるため、国や自治体が自ら事業をするのではなく、民間事業者に事業の全部あるいは一部を委託する動きが広がっている。このような手法の一つにPFI(Private Finance Initiative)という手法がある。

(近江八幡の病院PFI)

滋賀県近江八幡市にあった近江八幡市民病院は老朽化が進んでいたため、建て替えが計画された。計画当時、PFIという手法が注目されるようになり、この病院の建設の際にもPFIを導入するか検討され、結果としてこの病院の新築移転は病院にPFIを応用する先進事例となった。近江八幡市民病院は、近江八幡市立総合医療センターと名前をかえて、平成18年10月に旧敷地から離れた田んぼの真ん中に、新築移転した。建設された病院施設は、広々とした2階までの吹き抜けのあるロビーがある、廊下の広々とした、落ち着いた高級感あふれる病院となった。

(違和感はオープン前から)

新築された医療センターがオープンする前、平成18年7月のある夕方、私は古びた近江八幡市民病院の外来を歩いていた。その前日、近江八幡市が病院事業管理者を公募しているという記事を新聞で読んだことが、病院を訪れるきっかけだった。

古くなった病院が建て替えられると、設備が新しく、見た目が美しくなったことで外来患者の数は増加するのが普通だ。市の職員にしてみれば、このような新しい施設の責任者となることは、努力少なくして患者数が増加することは約束されているため、「おいしい」ポストとなるように思える。したがって、病院事業管理者という、市の職員としては相当に高い処遇をされるポストに関心を寄せる職員は、現任者で多いはずだ。それを「公募」するというのはどういうことだろうか。

考えられる可能性は2つ。(1)有能な人を「公募」で探してこなければならない程の大きな事情がある。あるいは、(2)病院の運営には、専門的な知識と経験が必要であると心から理解して、そのような人材が市内部にはいないと判断し、つてを頼っても見つからなかったので「公募」することにした。

正直なところ、もし公募する理由が(2)ならば、自分の年齢を考えれば採用される可能性はあまりないだろうが、応募してみようかという気持ちも少しあった。

当時の(旧)市民病院の外来は、たしかに老朽化し、薄暗く、狭く、建物がつぎはぎとなっていた。外来の一角には、売店と休憩スペースがあり、公園の売店や休憩所のようなつくりになっていた。確かに、古びていたものの、改築を繰り返して丁寧に建物を使ってきたのだろうと伺われ、掲示物からは患者を思いやる職員の配慮が伺われ、建物としての寿命は付きつつあるが、そこで働く人々と医療は好ましいもののように思われた。

つぎに、建築が終り、内装工事や設備の導入がおこなわれている新病院を見にいった。見るといっても、まだ診療が開始されてはいないので、外側からだけだが。旧市民病院からタクシーで新病院へ向かいその建物の姿が見えてきた瞬間、公募がされた理由は(1)なのだろうと確信した。明らかに市の規模に比べて、新病院の建築規模は大きく、そしてそこに投じられた費用は、相当なものだと感じた。新病院の外観をみて、呆然とし、そして近江八幡市の将来を心配した。

(事業収支見込)

自宅に戻ってから、近江八幡市の病院事業収支見込をWEBで見つけて、再び唖然とした。それは、平均在院日数の短縮と患者診療単価の伸びが現実的とは考えにくかったためだ。

この収支見込の通りに事業が展開されるとすれば、(a)商圏(診療圏)の半径を3倍程度以上にするか(b)これに匹敵する延べ患者数を、他の医療機関と協調して役割分担をすること確保しなければならないと見込まれた。(b)を実現するのには、長年の信頼関係と、時間をかけた機能分担を図らなければならないが、事業収支見込では急激な収入増を見込んでおり(a)を想定しているように読み取られた。

急激な商圏(診療圏)拡大を図るにあたっても、近隣市町村にある病院も急性期病院化を図っており、単純に患者を集めることは困難だと思われた。また、患者も、できれば近い病院にかかろうとする傾向があるため、何か特徴があるか、あるいは特に信頼を集める背景が無ければ患者は集まりにくい。

この資料をみた人で、病院事業管理者に応募する人はいるのだろうかと、疑問に思いながらも、少なくとも自分が応募することはないと心を決めた。

そのような経緯のある近江八幡市立総合医療センターと、よもや平成19年に「あり方検討委員会」の委員として、その経営難を接点としてお付き合いすることになろうとは、当時は思いもよらなかった。

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