PFI

「病院再生のPFIの利用について」国際医療福祉大学大学院(東京・福岡・栃木・小田原)

平成21年10月3日に、国際医療福祉大学大学院乃木坂スクールで行われる「病院再生セミナー」で「病院再生のPFIの利用について」という講義をする予定になっています。

このセミナーは、一般の受講者も参加する大学院の講義で、全15回の講義のうちの1回をお引き受けしたものです。

セミナーの全体を通じた意図は、主として地方自治体病院を例として、病院の(継続的)改善を越えた、再生という作業を学ぼうとするものです。この病院「再生」という言葉は、様々な使われ方をしていて、場合によっては実態は病院Assetの分割売却にしかすぎない行為にも用いられることがありますが、このセミナーでの再生という意味合いはリエンジニアリング、跳躍的改革という意味合いで捉えられています。

他の講師陣を拝見すると実務で経験豊かな方がご出講されるようですので、(私はたいしたことはありませんが)、聴講される方には有益なセミナーになるのではないでしょうか。

このセミナーは9月19日から毎週土曜日に行われ、主会場は、青山ですが、国際医療福祉大学の大田原本稿、小田原・福岡天神・大川のサテライトキャンパスでも受講できるそうです。また、インターネットで中継もされるとのご案内を頂いています。

 

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福岡市立こども病院での部分的PFI導入

福岡市は市立こども病院の整備をPFIにより行うことを断念し10割起債で行うという方針を以前示していました。(本Blog別頁参照)

9月 3日付け西日本新聞の記事「福岡市こども病院PFI 効果17億円に下方修正 建設など8業務に限定 」と、9月11日付け記事「こども病院PFI見直し 「適正か疑問」「変遷に不信」 福岡市議会 厳しい指摘相次ぐ」によれば、福岡市はPFI対象事業を施設設備の設計・建設・保守管理に絞り「民間資金1割、起債9割」として、部分的にPFIを導入する方針を市議会に説明したとのことです。

私は福岡市のPFI事業について詳しく存じませんが、PFIだから「よい」「だめ」という議論ではなく、どのようにPFIという契約手法を活用するかという視点で、事業を検討されているようですので、そのことは本来あるべき姿として結構なことだと思います。これまでの経緯を拝見していると、福岡市は、今後も十分な検討を進めていかれることと思います。

ただ、PFIを導入するか否かという部分に報道も市議会も、そして市も目が向いているように思われますが、事業規模やどの程度の負担を一般財源からどのような目的で行うのかという、本来地方自治体が医療機関経営を行う場合に十分検討するべき事項は、結果としてしっかり検討されているのでしょうか。報道で漏れ聞く数字を見て、そして先日福岡に行った際地域の病院の先生からうかがった同病院の位置づけ、診療圏、医療内容を思い出すと、長期的な福岡市の負担を思わずにはいられません。

どれほど手続き上正しい、そして政治的に合意できるプロセスを経ても、結局、結果が不適切では、公企業の経営としては本来の受益者の利益には結びつきません。 目的とする医療がきちんと行われるためには、現実的で将来を見越した事業計画が不可欠ですし、特に事業リスクを管理することが、環境の変化への余力を作ることになり、積極的な公共サービスの持続的展開に不可欠です。

10月3日に、国際医療福祉大学大学院乃木坂スクールで行われる「病院再生セミナー」で「病院再生のPFIの利用について」という講義をする予定になっています。

今週、福岡に行くものですから、時間があれば、この講義の準備としてもまた、自分の勉強のためにも場所や周辺の医療機関などの様子を見てこようかと思います。

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以上のように書いていたところ、本日(14日)この事業に関する資料が届きました。

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福岡市こども病院がPFI事業断念したのは賢明な判断

昨日付け読売新聞九州版や毎日新聞九州版の記事によれば、福岡市はこども病院の移転新営事業でPFI方式の導入を断念し、地方債の起債で資金を調達し自営する方針を固めたとのことです。

建物の建築とメインテナンス部分に絞って、PFI事業を再検討しても、PFI事業とする利益が見出せないとの判断を福岡市がしたとのことで、堅実な検討を進めた結果結論を出されたものと思い、賢明な判断だと私は感じました。

病院事業でPFI方式を応用する場合の問題点については、2年ほど前より近江八幡市民医療センターの経営問題に専門的立場から同市の委員会に係わったことを契機に、広く訴えてきました。

講演で招かれた高知県での高知医療センターや、直接ご連絡をしたことはありませんが今回の福岡市こども病院の事例を通じて、病院事業でPFI方式を応用する場合の問題点について、理解が広まりつつあることに安堵を感じます。

PFIの問題だけではなく、海外からのうわべだけの概念導入で、現実のわが国の医療から解離した政策が推進されたり、また病院の経営者が惑わされることが繰り返されています。

病院の経営・運営をもっと、基礎的知識を踏まえて、合理的・科学的に行う風土が必要だということを、医療機関も行政もそして国民も知る必要があると感じています。

こども病院 起債で建設、福岡市がPFI見直し( 人工島問題)
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090617-OYS1T00621.htm
 福岡市立こども病院・感染症センターを博多湾の人工島に移転する計画で、市は新病院の整備費について、約半分に民間資本を充てる当初計画を見直し、全額を市の起債で賄うよう検討していることを明らかにした。新病院の建設や運営に民間の資本や手法を活用するPFI方式を導入する方針だったが、建設については利点が小さいと判断した。(以下略)

毎日新聞九州版
http://mainichi.jp/seibu/news/20090617sog00m040004000c.html
(政府の談話部分)

市の方針転換について、内閣府PFI推進室は「全額を起債で賄うのなら、PFI方式とは言えない」と指摘。一方、起債を所管する総務省は「PFI的とみなし、交付税措置などは従来通り進める」と話し、病院建設に支障は出ない見通し。

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高知医療センターがPFI事業を解消する方向で協議している

先ほど報道機関から電話がありました。PFI事業で有名な高知医療センターでPFI事業としていた業務を、直営に切り替える方向で検討が進められていることが明らかになったそうです。

高知医療センターでは、事業計画で予定したPFIによる経費削減効果が得られず、経営状態が悪化していました。本日(6月16日)の共同通信のニュースによれば、今月8日PFI事業主体であるSPC(特別目的会社)から、PFI事業契約の合意解除の申し入れがされたとの事です。

PFIは普通30年程度にもわたる長期間の契約で、この間一定の支払いが続きます。ところが、病院の収入は医療保険制度の影響を強くうけ、長期的な予想は困難です。ですから、相当慎重な計画をしたうえで、変化に強い契約を考えておかなければなりません。PFIの先進国であるイギリスではこのようなことは数年前から問題化していますが、日本ではあまり知られていません。高知医療センターのPFI事業はこのような心配が現実になってしまったものと思います。

既に継続して述べてきたことの繰り返しになりますが、病院事業にPFIを導入するには、病院事業に関する十分な知識を踏まえた慎重で正確な事業見込み、適切な契約を締結するための、自治体側の十分な管理能力が必要です。果たしてこれらを満たすことが出来る地方自治体はどれだけあるのでしょうか。

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NHK 高知放送局のニュースより

“医療センター運営から撤退”

公共施設の運営に民間の手法を生かすPFI方式で運営されている高知医療センターの病院企業団議会が16日開かれ、民間企業でつくる運営主体が、病院の運営から撤退する意向を企業団側に伝えてきたことが報告されました。
これを受けて企業団側は、来年4月を目標に病院の運営を直営化する方針です。
高知市の高知医療センターで開かれた病院企業団議会の臨時会には、議員14人が出席しました。
高知医療センターは県と高知市の2つの公立病院を統合した病院で、全国の公立病院で初めて民間のノウハウや資金を活用するPFI方式を導入し、民間企業でつくる「高知医療ピーエフアイ」が運営していますが、4年前の開業以来、赤字が続くなど厳しい経営が続いていました。
16日の臨時会で企業団の山崎隆章企業長が、高知医療ピーエフアイから早期の経営改善の1つとして「合意によるPFI契約の終了を議題として協議したい」と、病院の運営から撤退する意向を伝えてきたことが報告されました。

その上で山崎企業長は「合意による契約の終了は、経営改善につながる具体的な一歩を踏み出せると判断し、協議のテーブルにつくことにした」と述べ、秋ごろをメドにPFI契約の終了に基本合意して、来年4月を目標に病院の運営を直営化する方針を明らかにしました。

また協議にあたって、医療現場への影響や、患者の不安のないよう細心の注意を払って進める考えを示しました。
PFI方式による公立病院の運営は全国各地で導入されていますが、内閣府によりますと、高知医療センターでPFI契約が解消されれば、全国の公立病院では滋賀県近江八幡市の市立病院に次いで2例目になるということです。

これについて尾崎知事は「PFI事業契約の終了は経営改善の協力要請に応えていただいたものと受け止めている。企業団が直接的に業務を運営し、徹底した経費の削減に取り組むことで、経営改善が具体的に進むと考える」というコメントを発表しました。
これについて高知市の岡崎市長は「『PFI事業は材料費を減らす目標が達成できず、公共が行うより割高だ』と企業団は指摘してきた。マネジメント料などの諸経費を削減することで経営改善の取り組みが一歩前進すると考える」というコメントを発表しました。

議会の後、高知医療ピーエフアイの間渕豊社長が、報道関係者の取材に応じ、事業から撤退することを決めた理由について「急激な医療環境や医療政策の変化により早急な経営改善が求められるようになったが、実行するのは非常に困難だと判断した」と述べました。

その上で「経費削減だけでなく、収益を上げることについてももっと早く目を付けるべきだったと感じる。PFIに参画した企業の500人弱の従業員に非常に申し訳なく感じていて、出来るだけ支援していきたい」と述べ、従業員の再雇用の問題などについて企業団側と協議していく考えを示しました。

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病院事業PFIでの施設・設備

病院事業をPFIで実施しようとする事例では、多くの場合、施設の新営や大規模改修と設備の更新を基礎として、それに様々な医療周辺サービスを組み合わせる場合が多く見られます。

病院の事業に要する費用を、大きく固定費部分と変動費部分に分けて考える場合、施設・設備費は固定費の大きな要素と普通は考えます。このため、施設・設備はPFI事業の存続期間永続するほど安定なものと思い込むのかもしれません。

現実には違います。病院事業にPFIの導入を検討する程度の規模の公的病院は、高度な医療を担います。このような医療機関では、たとえばMRIや時にはPETのような大規模で高度な設備を備えることが期待されます。また、良好な入院療養の環境も期待されます。

冷静に考えればわかることですが、今から30年前に、PETやMRIはほとんどありませんでした。MRIが普及し始めたのは、25年ほど前ですし、PETはさらに極最近です。これらの装置は、相当の施設整備を伴います。一ベッドあたりの床面積や、病室一室あたりの収容患者数など入院患者の療養環境を考えても、この30年間に社会的な要求水準、保険支払い上の基準が変化してきました。

PFIの契約期間は30年程度を想定する場合が多く見られますが、この30年間同じ建物で医療を提供し続けることはそもそも困難なのです。

地方自治体が建物を作る場合の費用見積もり方法には、民間で建物を作る場合とは異なった基準があり、これが建物のコスト高の原因の一つとなっています。この部分のコスト圧縮にはPFIは有益な手法ですが、PFI事業の対象となる建物がPFI契約期間の存続中そのままであるなどと考えることは合理的でないと、明確に意識しておかなければなりません。

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福岡市立こども病院のPFI事業見直し

現在、国内で何件か病院事業でPFIを導入する検討が進んでいます。その中でも、福岡市立こども病院・感染症センターの移転に伴うPFI事業の推移については関心をもってみていました。

この度、福岡市はPFI事業の範囲を見直することを決めたと報道されています。福岡市は、医療周辺サービス部分のPFI化を見合わせることにしたようです。

PFI事業とする範囲を検討する場合、建築・設備管理部分にPFI事業を絞ることは、総費用を減少させることに役立つと最も期待される領域です。したがって、設備管理のどの範囲をPFI対象とするかなど、慎重かつ病院運営に関する専門的立場から具体的に検討した上で範囲を決定すれば、PFIを導入することの利益を地方公共団体が得ることが出来るかもしれません。

この件に関する報道の一部に、PFI事業全体の採算性に疑問が生じたとするものも見受けられます。このような報道を見ると、このこども病院移転事業とPFIの関係についてどの程度の理解をもって、報道機関が報じているのかを疑問を感じました。

そもそも、高度な小児医療サービスは押なべて不採算となる診療報酬体系になっています。このため、多くの公立の こども病院は累積赤字を抱えています。では、公立のこども病院はこの赤字を理由に廃止という判断をすることになるのでしょうか。

地方公共団体が高度な小児医療サービス提供する医療機関開設しているのは、このような医療は不採算であるために民間の医療機関に期待することが出来ないからです。地方自治体が、高度の小児医療サービスを担う病院(3次医療機 関)を運営するとした場合、その事業の採算性を考慮するのではなく、その事業が生み出す公共の利益と一般財源の負担がバランスするように、支出をどこまで軽減できるのかという視点で考えることになります。このことを十分意識しなければなりません。机上だけで独立採算が実現できる、非現実的な計画ではなく、求められる公共サービスとしての医療サービスとその費用の程度を現実的に見積もって、事業計画を立案する普通の判断が今福岡市に求められているように感じています。

今後の推移に、関心をもって見ていこうと思います。

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高知医療センターの資金ショート

昨年、7月に高知県で講演依頼されうかがった際に、地元の関係者より、2008年度中に資金ショートする可能性が高い旨のお話を伺った記憶があります。その事態に至るまでに関係者の早期の決断で状況が好転していることをお祈りしていたが、改善はしていなかったようです。

2月18日付の報道で、高知県と高知市が資金の貸付を行った旨が報じられていました。
このような状況から立ち直るためには、とりあえず出血を止めるか絞るかしなければならないのですが、具体的な行動としてどのような対策がとられたのか、良く見えてきません。

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毎日新聞 2009年2月18日 地方版高知

高知医療センター:7億6200万円貸し付け、ショート回避へ--県と高知市 /高知

 高知医療センターの資金繰り問題で、県と高知市は計7億6200万円を貸し付けることで3月末に予想される資金ショートを回避する方針を決めた。県は2月補正予算案に計上、同市も計上する見込み。

 貸付額は県、市で折半し、3億8100万円ずつ。センターは医業収益と材料費圧縮が当初計画を下回り、予想より赤字が約8億円膨らんだため、資金繰りが悪化。センターを運営する県・高知市病院企業団が資金援助を要請していた。

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筑波大学附属病院再開発事業(PFI)

2週ほどになりますが、筑波大学附属病院の再開発をPFIで行う事業契約が締結されました。このPFI事業は、新しい建物の新営と既存の病棟・外来棟を含む病院全体での業務を組み合わせたものです。

1度目の入札では事業者がきまらず、事業内容について検討を行った2度目の入札で事業者が決まり、その後も継続して契約内容を協議し、2月6日付けで契約に至ったものです。

筑波大学は私の母校で、このPFI事業に多くの方がかかわっており、そのような方にはPFI事業の問題点・課題についてお伝えしてきました。その中で、検討を深められた事業ですので、病院PFI事業としては派手なところはないかもしれませんが、堅実に成果を上げられるものと期待しています。

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毎日新聞 2009年2月6日 地方版
ニュースBOX:筑波大付属病院の施設整備事業で調印式 /茨城

 筑波大は5日、PFI方式を使った付属病院の施設整備事業を落札した日立ビルシステムなどの出資した特別目的会社、つくばネクストパートナーズ(石田康社長、つくば市)と契約書を調印した。落札額は1186億円。同大によると、PFI方式により約5%経費を軽減できたという。施設整備は、地下1階地上12階の新棟(延べ床面積約4万平方メートル)の建設と、既存の病棟の一部(同約2万5000平方メートル)を改修する。病床数は現在と同じ800床。新棟は12年9月完成予定。PFI事業の期間終了は32年3月。

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東京新聞 茨城面 2009年2月6日

PFI方式で運営管理 国立大付属病院で初導入 筑波大が事業契約締結

 筑波大は五日、老朽化が進む付属病院の新棟建設を核とした再開発で、特別目的会社「つくばネクストパートナーズ」(つくば市)と事業契約を締結した。国立大学法人の付属病院で初のPFI方式を導入し、5%程度の経費縮減が見込めるという。 (小沢伸介)

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近江八幡SPCは不見識といわざるをえない。

近江八幡市の病院PFI契約が解除されたことを受けて、SPCの社長らが記者会見をして報道機関に対して、彼らの見解を述べています。この内容を見ると、首を傾げたくなる発言が多く見られます。報道されている範囲でのSPC側の発言について、私見を述べたいと思います。

「私たちは病院を直接ではなくサポート運営する立場。医業はわれわれの分野でない」
「当社に委託されている運営業務費用は、センター全体の16%にとどまる。」

 通常病院の支出の約50%は人件費であり、医療材料や医薬品などの外部購買品に対する支出が20%強を占めます。したがって、病院の支出の管理上残る支出(30%)をどう圧縮するかが重要となるのです。

 その残る部分の約半分をSPCが占めているということになりますから管理しなければならない支出のかなり大きな部分をPFI化することで、経費が固定化されたことになり、病院経営に重大な影響がある程度の数字です。
 このように、全体の支出に対して16%という数字のみを示すことで関与を低く示そうとするのは、病院経営について精通している人物の発言としては、何かの意図があるのか、あるいは病院経営について無知であるのかどちらかと考えざるをえません。

「建物の建設や維持管理、運営面は、市の要求に対し100%以上の成果を上げている」

 SPCの行う事業が適切であるかどうかを評価する基準は、最終的に市とSPCとの間で合意をすることが出来なかったと記憶しています。また、医療事務を請け負っていた会社の従業員が金銭を着服した事件が刑事事件化しています。
 このようななか、100%以上の成果を上げているというのは果たして何を言っているのか理解できません。根拠を尋ねたいものです。

「一床当たりの単価は二千五百万円で民間病院並み。災害拠点病院の機能も備えている」

 国立病院機構ですら、建築単価は1床当たり1500万円~2000万円程度としています。
 果たして、1床あたり2500万円という民間病院はどの病院でしょうか?それが、(~並みという表現で比較の対象となる)平均的な病院なのでしょうか?

「PFI方式の採用と経営難に因果関係はない」

 以上の発言から読み取れるように、病院のコアサービスである医療や病院事業全体の利益と、SPCの利益が分離しているためPFIを導入する時には相当に綿密に事業計画を立ててSPCのリスクと病院事業のリスクを同一化する必要があるのです。
 そうでなければ、このSPC社長の発言の用に、病院事業のリスクを放置し、営利企業としての目的である営利を追求することになるのは自然であり当然の帰結であると考えます。

 このような発言がされるSPCと契約を結んだことがPFI事業の失敗の一因であったという見方もできるでしょう。また、このようなSPCをコントロールできるだけの力量が地方自治体の側にも必要であるという見方もできるでしょう。

以下新聞報道より

PFI解約に調印 近江八幡市の医療センター

中日新聞【滋賀】
2008年12月26日

 PFI(民間資金活用による社会資本整備)方式で運営する近江八幡市立総合医療センターについて、市とセンター、運営主体の特別目的会社(SPC)「PFI近江八幡」は二十五日、事業契約を解約する合意書に調印した。SPCが担当している医業以外の運営は、来年四月から市直営となる。計画段階を含めて全国に十二あるPFI病院で契約解除は初めて。

 市役所で調印式があり、冨士谷英正市長、槙系(まきけい)院長、SPCの井谷守社長が出席した。

 冨士谷市長は「一つの山は越えられた。病院を未来永劫(えいごう)残すレールに乗れたと思う」と話した。井谷社長は「(契約通り)三十年間続ける思いだったが、市の財政事情を考えやむを得ず受け入れた。PFIシステムに問題はない」と強調した。

 調印により、事業計画は二〇〇九年三月末で全部解約される。市はSPCに違約金二十億円、建物の購入費百十八億円などを支払う。

 (松瀬晴行)
◆「方式と経営難因果関係ない」 SPC側が主張

 「契約解除の主な原因は、収支の現状と近江八幡市の見通しが著しく乖離(かいり)したことにある」

 調印の後、会見した特別目的会社(SPC)「PFI近江八幡」の井谷守社長と平山賢一取締役は、市立総合医療センターが経営難に陥った原因をこう説明し、「今後の病院PFI事業の推進に支障がないよう願いたい」と何度も訴えた。

 市のずさんな当初計画に加え、元本や金利の支払い計画の甘さも露呈した。

 市は毎年、当面必要がない大規模修繕費一億五千万円をSPCに支払っている。井谷社長は「民間が受け取っても税務上、利益となり課税される。だから『市で積み立てておいた方が得策』と提案したが、市側は均等払いにこだわり受け入れなかった」と明かした。

 運営面では「当社に委託されている運営業務費用は、センター全体の16%にとどまる。PFI方式の採用と経営難に因果関係はない」と強調。市長の諮問機関「あり方検討委員会」から「ホテル並みの超豪華建築」と批判されたことに対しては「一床当たりの単価は二千五百万円で民間病院並み。災害拠点病院の機能も備えている」と反論した。

 報道各社から「官と民の協働が感じ取れなかったが」「SPC側に責任はないのか」と追及されると、井谷社長は「私たちは病院を直接ではなくサポート運営する立場。医業はわれわれの分野でない」と主張。「建物の建設や維持管理、運営面は、市の要求に対し100%以上の成果を上げている」と繰り返した。 

 (松瀬晴行)

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英国の病院PFI事業の現状をふまえて

英国のNHSでは、病院の資本更新(建物の立替)などに、PFIを応用してきました。このことを、わが国でも病院事業にPFIを導入を検討する際参考にする人がいます。

実際、わが国でPFIの導入が進められたのは、英国でPPP/PFIが導入されたことを受けてでした。

では、現在、英国で病院PFIはどのように評価されているのでしょうか?

英国では、病院PFIは「完全な失敗である」とまで評価はされていませんが、うまくいっていないと考えられています。

詳しくは、高知県で行った講演(公立病院改革セミナー(高知県))のスライドをご覧ください。

http://www.iryo-japan.net/kouen/

このような、失敗は、BMJ(British Medical Journal)など有名な英国の医学雑誌でも繰り返し取り上げられており、病院事業の関係者が真剣にPFIの導入を検討していれば、計画の段階でPFIの困難さに気付くことが出来たでしょう。

訂正:スライド43ページ下から3行目 誤 晒名 ⇒ 正 使命

ところで、高知医療センターPFI事業計画に深く関わった高知県・高知市病院企業団 高知医療センター 事務局長 として長瀬順一という方がいらっしゃるようですが、私とは(苗字は同じですが)全く面識も関係もない方です。時々尋ねられますので、ここでおことわりさせていただきます。

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近江八幡市 病院PFI契約解除へ

 京都新聞(WEB版),朝日新聞、日本経済新聞など各誌で、近江八幡市が病院PFIの契約を解除することになったと報じています。なお、これらの報道では、収益が確保できなかった原因として、病床稼働率が予想を下回ったことを指摘しています。

 では、なぜ病床稼働率が予想を下回ったのでしょうか?記事ではその答えについて言及されていません。私は病床稼動予測が過大であったためだったと理解しています。

 病床稼動が予測を下回る理由として、一般的には(a)設備不足・人員不足(医師不足)などの場合と、(b)需要予測の誤りの場合があります。近江八幡市の場合は、(b)需要予測を過大に見積もったことが原因であると私は考えています。以下で、もう少し詳しく説明しましょう。

 近年、病院の収益(および利益率)を向上するために平均在院日数を短縮する努力が続けられてきました。平均在院日数を短縮すると、同じベッドを埋めるにも多くの入院需要が必要となります。空のベッドからは、収益は生まれません。(たとえば100床のベッドを埋めるために、平均在院日数15日なら月200人の入院需要があればよいが、平均在院日数が7.5日になれば月400人の入院需要が必要となります。)つまり、平均在院日数の短縮を行うためには入院需要の確保が前提として必要となるのです。

 都心部の急性期病院で極短い平均在院日数を実現している病院では、それだけの独自の入院需要を自院の外来を大規模化して確保しているか、あるいは他の病院と協力して高度な医療技術を提供する部分のみをその病院で担当する分業を行っているのです。

入院需要を確保するための作戦は2つしかありません。
(1)病院の受療圏(患者が来院するエリア)を拡大して、受療圏内の人口を増加させる作戦。たとえば、入院患者がくるエリアを半径5kmから半径10kmに拡大するという作戦が一つ目です。人口当たりの入院需要発生確率は同じだから、入院を確保するためには広い範囲から患者さんを集めるという考え方です。
(2)一定地域での、入院占有率を高める作戦。たとえば、近江八幡市で入院する患者が発生した場合、他の医療機関にかかる率を抑え、入院患者を(極端に言えば)根こそぎ近江八幡市民総合医療センターで入院させるようにするという作戦が2つ目です。

(1)の作戦については、近江八幡の近隣には、すでにいくつもの民間病院があり、医療機能も類似しています。受療圏を拡大するのは容易ではないと考えられます。
(2)については、他の地域医療機関の患者を奪うことになり、公立病院の設置目的に合致するとはいえないでしょう。

以上の検討により、近江八幡市民総合医療センターは入院需要を増加させることに困難がある状況にあると考えられます。

 実際に、近江八幡市民総合医療センターでは既設の病床数の見直しを十分行うことなく病床数を設定して、施設・設備・そして人員などの事業規模を設定しました。ここから既に近江八幡PFIの破綻は始まっていたのです。

Kyoto Shimbun 2008年12月15日(月)

病院PFI解除へ解決金20億円
    近江八幡市、運営側と合意へ

 PFI(民間資金活用による社会資本整備)方式で運営し経営が悪化している滋賀県近江八幡市立総合医療セ

ンターをめぐり、PFI契約解除へ、同市が同センターを運営する特別目的会社(SPC)に解決金約20億円を支払う条件でほぼ合意し、近く調印することが15日、分かった。PFI契約の解除は、経営破たんした「名古屋港イタリア村」(名古屋市)を除き全国で初めて。

 市は病院事業債を起債して、2009年3月までに建設費残額をSPCに支払って施設を一括で買い取り、4月から同センターを直営に戻す方針。財政調整基金などの約16億円と、すでにSPCに支払った修理費積み立て金約4億円と合わせて解決金とする。

(以下略)

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病院にPFI事業は不適なのか(下)

病院事業にPFIを適用する際の問題は他に2つあります。

(2)病院事業の収益は国の政策で決定される医療保険制度に全面的に影響されるが、国の医療政策の変化はPFI事業の存続期間よりもはるかに短期間で変化する。

 建設を伴うPFI事業は支出を決定しますが、その存続期間としては、30年程度あるいはそれ以上が設定されます。

 他方、病院事業の収益はほぼすべてを医療保険制度に依存していますが、医療保険制度は数年単位で大きく変化します。これは、医療保険制度を経済的インセンティブとして最大限に活用し、医療サービスを制御しようとする厚生行政の影響で生じている現象です。

 このように変化が激しい医療保険制度の下では、収益の予測が困難です。ところが、近江八幡市および高知医療センターで行われたPFI契約では、長期に同じ事業を継続することを前提として、事業支出を固定化し金銭債務化してしまいました。つまりこれらのPFIのスキームでは、支出が収益と解離することが当初から予測されたのです。

 今後高齢化社会の進行に伴い国民医療費の増加が必至で、これを抑制しようとすれば病院の収益は抑制することになります。

 ここまで考えれば、事業支出を固定化するような契約を結ぶのであれば、長期的な収益は相当謙抑的に見積った上で、事業支出を計画しなければならないのは当たり前だと気付くことでしょう。

 さて、このような謙抑的な支出予算で、はたしてPFI事業が成立するのでしょうか?そもそもPFI事業として成立しなかったのかもしれません。少なくとも、相当の懸念を持ちながら計画をすべきだったのです。

(3)地方自治体には、病院事業を経営する管理能力に乏しい。

 そもそも、地方自治体立病院の大部分は、経営が赤字であることが知られています。
この原因は、施設・設備・人員が需要に対して過大なためで、総務省が公立病院改革ガイドラインで病院経営に対して実質的に求めている本質は、施設・設備・人員の需要に対する適正化です。

 つまり、経営の基本である需要の予測とそれに対応する投資(施設・設備・人員)を適切に行う能力が、多くの地方自治体では欠如しているといわざるを得ないのが現状なのです。

 このような経営能力で、病院経営という実務のみならず、契約関係という法務上の管理も行う必要があるPFIを適切に調達できる能力が地方自治体に備わっているとは到底期待できません。実際、病院事業でPFIを導入した地方自治体などの大部分ではコンサルテリング会社の協力を得ています。コンサルティング会社の協力を得るということは、内部に適切に事業を管理できる人材に乏しいことを意味しています。

病院にPFI事業は適するのか?

私の答えは、次の通りです。

「正しい方法で、能力のある自治体が、うまくやれば、うまく行くかもしれない。」

「しかし、今の日本の地方自治体の病院経営能力を考えると、PFI事業化してうまく行くと思うのは、相当楽天的な観測だと言わざるを得ない。」

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病院にPFI事業は不適切なのか(中)

報道機関からの取材で、病院事業でのPFI活用の是非について意見をしばしば求められる。

答えとしては、現在の日本の医療制度を前提とし、地方自治体などの事業管理能力の水準を考慮すると、病院事業にPFIを活用するのは事業破綻の可能性が高く危険であると考える。

以下理由を述べて行きたい。

(1)医療法上の制約が、PFIのリスク分担スキームの適正な実現を困難としている。

そもそもPFIは公的事業(経営)改善手法と資金調達手法を、公の側にとって事業リスクを低減するように組み合わせたものとして企図したものだった。

つまり、公的事業(経営)の改善(および効率化)を民間事業者を導入することにより実現しようとする際に、民間事業者は(営利企業として当然)公の犠牲の下に自己の利益を最大化しようとする行動をとろうとする。このような行動を抑制し、公と民の便益およびリスクをバランスさせるために、事業失敗により生じる財務リスクを資金調達と事業責任を民間事業者にも分担させるのがPFIが成立する前提である。各種の契約手法は、このバランスを実現するための法的技術に過ぎない。

ところが、病院事業にPFIを導入しようとすると、わが国の法制度上、民間事業者に委託できるのは病院の施設建築および管理をはじめとする医療サービスの周辺サービスに過ぎず、収益を決定するコアサービスである医療サービス自体は地方自治体など公が設置者の責任として行う必要がある。

水泳プールや体育館、博物館の運営にPFIが導入された場合は、コアサービスに民間事業者を関与させることにより、事業全体の成功如何を民間事業者の収益に反映させるなどの方法を取ることが容易であり、事業全体のリスクを公と民で分担することが可能となる。しかし、医療は上で述べたように、コアサービス部分は公が担当することとなり、民間事業者はコアサービスの成否から法的に隔離されている。

もともと、この隔離は営利を目的とする民間事業者が医療に参入し、患者の犠牲の下に自らの利益を確保しようとすることを予防するために、設けられているものであった。しかし、この状況ではPFIを病院事業で応用すると、病院事業というコアサービスを破綻させても民間事業者は自己の利益を確保しうる構造が出来上がってしまうのである。

このように、医療法上の制約が、PFIのリスク分担スキームの適正な実現を困難としている。

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地方債起債の手続き開始。近江八幡総合医療センターPFI解消に向けて

11月25日付け京都新聞WEB版によると近江八幡市立総合医療センターのPFI事業について、金利圧縮のためPFI事業の直営化するために必要な資金調達の手続きである地方債の起債申請に向けて、市側が市議会に提案することになったことを報じています。

PFIは、民間からの資金調達という側面と民間への事業委託の側面の両方を持ちます。民間への事業委託による効果が計画通りに得られていない以上、民間からの資金調達の利率を大幅に下回る利率で資金調達できる地方債に駆りかえるのは、合理的な判断です。

Kyoto Shimbun 2008年11月25日(火)

PFI契約解除に向け起債申請を提案
近江八幡市の医療センター

 近江八幡市は25日、近江八幡市立総合医療センターのPFI(民間資金活用による社会資本整備)契約解除に向け、病院事業債118億円の起債を総務省に申請する議案を、12月定例市議会に追加提案する方針を明らかにした。センターを運営する特別目的会社(SPC)「PFI近江八幡」から病院施設を買い取り、直営に戻す方針。

(以下略)

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